彼がいるだけで、不思議と場の雰囲気が和む。

 プライドなんてどうでもよくなって、自然と笑い声が漏れてしまって、それが心地よくて。

 俺たち5人は、個性が強い自我を晒しながらヤンチャに遊べる関係になっていった。



 そんな天禰が初めて自分の強い思いを俺たちに吐き出したのは、小1の梅雨前。

 『この5人でヒーローになりたい!』

 砂場でトンネル水路を作っている時だった。



 『ヒーロー?』と、口ぽかんで目をパチパチさせた俺たち4人。


 『なっなーんて、みんなはヒーローなんてなりたくないよね? ごめんごめん、今のは聞かなかったことにして』
 

 天禰は女の子に間違われる大きい瞳を歪めながら、長めの髪と手をブンブン振り回しごまかしたけど……

 俺と我流と尊厳は察したよ。


 ヒーローになりたい理由。

 独璃(ひとり)が大好な戦隊ヒーローのピンクに、憧れたんだろうなって。

 天禰は見るからに、独璃のことが大好きだったから。