俺のスマホはマネージャーのポケットの中か。

 最後に『客席から俺だけを見ててね』くらい送りたかったな。

 ソファに座ったままうなだれ、ため息を一つ。

 吐き終わったと同時、あごが強制的に上を向かされた。



 いきなり俺の胸ぐらを掴んだ我流。

 ムカいているのがまるわかりな目。

 怒りを食いちぎるように歯をギシギシとこすり合わせていて、俺も心を武装ぜずにはいられない。

 弱者として彼にひれ伏したくなくて、瞬時に魔王を憑依させた。



 「衣装がシワになる。手を放して」



 「くっそ」と吐いた我流の手は、もう俺の胸ぐらを掴んではいない。


 「心がもろいヒトリをまぶしくて残酷な世界に蹴落とした責任、俺ら3人で背負ってんだからな!」

 
  天井に突き刺すように一吠えして、ふらつきながら向いのソファにお尻を沈ませている。