視線を上げ、闇色に染まる瞳で唯都様を見つめてみる。

 彼は私の隣で楽しそうに肩を揺らしながら、あまねさんとの思い出を語っている。


 私にこんな特技があったんだ……
 

 あまねさんの話を聞きたくない私の耳は、唯都様の声を言語だと認識していない。

 優しいオス声のBGMが流れているなくらいな感覚。

 話の内容は一切、脳まで届かない。



 時折「あまね」と大切に紡がれた3音が耳に突き刺さり

 『私はあまねさんの代わりなんだ』

 握りつぶされたように心臓がギューッと痛んでしまって。



 苦しくて、泣きたくて。

 でも笑っていないと嫌われそうで。

 拒絶されるのが怖い私は、作り笑顔のまま頷きを繰り返すだけ。