「唯都……様?」


 「弱音を吐いたら良い意味で吹っきれたよ」



 言葉のわりに浮かない表情。



 「情けない俺をさらけ出してもいい?」


 「もちろんです。唯都様のことならどんなことでも知りたいので」



 力強い語尾とともに拳をブンと振る。

 唯都様は目の前の座卓に肘をつくと、絡めた手のひらの上に顔を乗せた。


 
 「ステージで空を見上げながら、強く願ってしまう自分がいるんだ。いつか雲の隙間から伸びる光のはしごを使って、俺の前に降りてきてくれたらなって」




 遠い目のまま、ふわっと表情をやわらげた唯都様。

 瞳が恋色に染まっているように見える。

 

 空から会いに来てほしい人。

 それって……



「唯都様の大事な人は……」


「死んじゃった、俺の幼なじみ。幼稚園から一緒だったんだけどね」