「あっ、クッキー食べますか? この部屋にはないんですけど…… チョコチップ入りで。私が焼いたから味の保証はできませんが……」



 待って待って、それこそアウト。

 推しに毒見? 

 ファンとしてありえない。


 万が一私が作ったクッキーを食べてお腹を壊したら……

 吐いちゃったら、倒れちゃったら……

 体の中にガン細胞が作られてしまったら……

 唯都様がアイドルとしてステージに立てなくなっちゃう。



 「クククっクッキーは……そういえばもう、全部食べちゃったんでした……」



 ウソをついてごめんなさい。

 唯都様の健康のためです、許してください。


 

 「フフフ」




 えっ、笑われた?




 「琉乃ちゃん、俺に気を使いすぎ」




 頭をぽんってされた。




 「そうやってずっと、家族の顔色をうかがって生きてきたんでしょ?」


 「……」


 「ごめんね。もっと早く君を見つけられていれば、息苦しいこのお屋敷から救い出してあげることができたのにね」