「唯都君の要求というのは、なんだね?」


 警戒心から表情をこわばらせる父に対し


「琉乃さんを俺にください」


 彼女の親に結婚の許しを請う彼氏みたい。

 今度は深く頭を下げて。



 (真っ白なタキシード姿は反則だよ。

  王子様に間接プロポーズをされた気分になっちゃう。

  心臓が苦しい///)



 両親は確信したみたい。

 ポッコリお腹の金持ちアルファより唯都様に私を引き渡した方が、神楽家が手にする財が大きいと。



「うちの娘は、君の好きなようにこき使ってくれて構わない」


 父も母も微かな迷いすらなく、唯都様の要求を受け入れ

 顔も知らないアルファとの婚約話は、見事白紙になったのでした。
 


 とりあえず安心した。

 平和に物事が解決して。


 『流血&警察騒ぎになったらマスコミが来ちゃうかも……』


 ヒヤヒヤしながら見守っていたけれど、気に病みすぎていたらしい。


 だってだって、唯都様が言ってたから。

 私の両親のメンタルを、めった刺しのズッタズタに切り裂くと。