いつのまにか製造されていた雫が、瞳を濡らす。

 重力に抗えなくなった涙が、頬を滑り落ちていく。



 潤んでぼやける視界の向こう、唯都様が優しく微笑んでいて。

 綺麗な指で私の涙をそっとぬぐってくれた。



 「琉乃ちゃんは、その人と結婚したい?」



 悲しみを包み込むような優しい声が、余計に私の涙腺を緩めてしまう。



 「したくないです……でももう決まったことで……」


 結婚が白紙なんてありえなくて。



 「素直な気持ちを教えてくれてありがとう」



 自分の想いを口にしただけの私を、こんなにも褒めてくれるんだ。

 本当に優しい人だな、唯都様は。


 「ねぇ琉乃ちゃん、今から君のおうちにお邪魔してもいい?」