フライング気味に浸ってしまう幸福感に脳が支配され、脳がとろけそうになった瞬間だった。

 我に返った私が、唯都様を両手で突き飛ばしてしまったのは。



 キスをあからさまに拒絶。

 唇が重なり合う直前だったのに。




 「……どうして?」と、悲しみの目が私に向く。

 罪悪感から逃げたくて、視線が勝手に下がってしまう。



 「ダメ……なんです……」


 「俺が嫌い?」



 私の肩に触れている唯都様の手が、力なく震えているのがわかる。



 「嫌いとか……そういうのではなくて……」


 「アイドルの俺が恋愛をすることに抵抗があるの? 知っていると思うけど、俺たちエンラダは一般人からお金を取らずに活動をしている。その代わりに俺たちのプライベートには口を挟まないでと、世間に伝えてある。何も問題はない」