私を拾ったとも言える彼の暮らす家はマンションで,エントランスが明るかった。
真正面からそのオレンジ色を浴びて,私は悲しみに暮れた歪な冷静さを取り戻す。
親が買ったのかな,それとも自分で?
自分の住んでいる家に似ている。
そんな余計なことを考えられるくらい,勇二の家とは似ても似つかない。
思い出さなくて済むから返って助かった。
戻りたくない今日1日分の宿にもなって,安心する。
光を浴びて,自分の身の汚さを自覚せざるを得なかったけど,彼が私の肝心の左手を繋いだままだったから,今さら隠そうとも思えなかった。
ただ無言で,3階だった彼の部屋に立ち入る。
玄関で靴を脱ぐと,彼の匂いと思われるいい匂いがした。
私はかがないように心がけて目を伏せる。
すると,彼は私を抱き締めるすれすれで,その首筋に慰めるようなキスをした。
話なんて,1つも聞かせていないのに。
だけど
「私,さっき彼とシたばかりなの。それに服も汚い」