彼の家があった住宅街とは違い,ここ一帯にはお店が建ち並ぶ。
今もこんな時間だと言うのに,お店がやっていたり,やっていなかったり。
誰かがコンビニ袋を下げて,コンビニのメロディーに見送られて出てくる。
さっと顔を伏せて,私はそこにいないふりをした。
わざわざそんな他人を注視する人もいない。
誰にも見られたくない時に人を見たことで,ドキドキしながら歩くことになる。
不本意に思いながら10数m歩いたところで,身体がぐらりと傾いた。
無理に走ったからかもしれない。
それとは別に,無理に走って痛い足を庇いながら歩いたせいかもしれない。
右足のヒールが折れて,カクンと膝をつく。
転ぶと言う経験も,もう長らくしていなかった。
もう何もかも恥ずかしい。
大事にされなかったことも,あっさり捨てられたことも,今1人なのも,真っ直ぐ歩くことすら出来ない無能さや不甲斐なさも。
今日,ううん昨日の午前中は雨がふっていた。