好きだったよ。

というかこんな数分で突然嫌いになれるわけもない。

今も好き。

結婚なんて,実を言えば私も覚悟できてなかったけど。

でも,だけどいつかは愛に変わるのを待っていた。

なんでかな,気付けなかったのは。

なんでかな,大事にしたかったのに。

大事に,されたかったのに。

息が切れて,徒歩に変わって。

自分にはもう,行き先なんて無いことを思い出す。

ブーっと,傷ついた心を強く揺さぶるように,ジーパンのお尻から振動がした。

行き先どころか,自分の家にも帰れないことに,私ははっと気付いた。

鍵……それに,財布。

スマホ以外の,カバンに入れていた全てがない。

せめて鍵さえあれば,他は着払いの郵便にして貰えたかもしれないのに。

だとしたら,このメッセージは勇二からだろう。

そう思えば,自然と嗚咽のような笑いが溢れた。

最後に彼が私を引き留めたのは。

惜しいとおもったからじゃない。

罪悪感があったからじゃない。

ただ,荷物を置いていくなと,そういいたかっただけ。

それをこんな風に都合よく解釈して。

未練があるのは,本当に私だけなんだ……