言いたくなかった。
だから,彼の顔を見なかった。
彼は少し黙って,小さく答える。
「……シャワーしかないけど,好きに使って。服は洗濯機に。洗い終わるまでは,僕の服を貸すよ」
"僕"。
とても若く聞こえるアルトの声に,私はまた目を伏せた。
「ありがとう」
知らないふりをして,私は浴室に向かう。
全て洗い流すような気持ちで長めのシャワーを終えると,いつの間にか脱いだ下着を隠すように着替えが置かれていた。
短パンと,白T。
その2つが,どうせ直ぐに脱ぐだろと言葉を発しているようで。
私は少しの間だけ迷う。
その間に,洗濯機の上に置いたスマホが光り続けるのを見て,私は内容を見ること無く電源をおとした。