「美里」
繕ったような平然に違和感を感じて,私は未だ半裸で寝具に胡座をかいている彼氏を振り返った。
「別れよう」
その瞬間,信じられない思いでキーンと耳鳴りがする。
何を言っているのか分からなくて,頭は白くもならずに虚無だった。
ただ,意味が分からない。
「急で悪いんだけどさ,やっぱり」
何が,やっぱりなの?
ずっと考えてたってこと?
それならどうして,今日も
ー私を抱いたの?
思い返せば,今日の行為はやけに気持ちが悪かった。
何かを惜しむようで,無茶苦茶にすがりつくようで。
「理由は?」
胸を圧迫されるような苦しさを圧し殺して,無表情のまま問う。
悔しくて,悲しくて。
そうでもしていないと崩れそうだった。
「友達にさ,言われたんだよ。大学の時の,ほら,大西。まだ付き合ってたんかって,結婚するのかって」