「ちさかぁぁ!アンタ天才だよ!この短期間で本当にめちゃめちゃシュート上達してる」


最後のスリーを決めても10点以上差が開いていたから試合には負けたはずだけど、川崎は興奮冷めやらぬ様子で私の髪の毛をわしゃわしゃした。


「や、やったぁ」


手が震えてる。

自分が試合であんなシュート決める日が来るなんて、信じられない。


でも、紛れもなく現実だ。




早く、幡多くんに報告したい。





そう思いながら、ふと体育館2階の観客席に目を向けると、その幡多くんが…。



え?幻覚?

なんであんなところに…土曜日なのに。



目が合ったように見えたけれど、立ち上がってそのまま体育館を出て行ってしまった。




チラリと鬼江を確認すると、まだミーティングが始まる様子も無さそう。



「川崎っ、ちょっとトイレ行ってくる」

「えっ?いま?」

「うん!適当に誤魔化しといてっ」

「ちょ…千坂!」



私は、走って体育館を飛び出した。