汐見(しおみ)ー!決めろシュート!なんで入んないんだよ!」



「は、はいっ…すみません」



女バスの鬼コーチ、蟹江(かにえ)先生の怒鳴り声が放課後の体育館に響く。

普段は陽気な色黒のオジサン。
けれど、ひとたび練習が始まると“鬼”と化す事から、部員たちに陰で“鬼江(おにえ)”と呼ばれているのはここだけの話。


怪我人が出て、補欠の私がスタメンに繰り上がってからこうやって喝が飛んだくることが増えた。


正直、メンタルが崩壊しそう。





千坂(ちさか)!大丈夫!次は決まるって」


休憩時間。

同じ2年生でチームメイトの川崎(かわさき) 未来(みく)が私の背中を叩いた。


「かわさきーぃ。もう泣きそう」

私が嘘泣きするポーズをとると、川崎は笑いながらドリンクを飲んだ。



チームメイトは、シュートが決められない私を責めたりはしない。

励ましてくれるし、応援してくれる。


でも実際、そんな皆んなの優しさに応えられないことが一番悔しい。