「最近、千坂のシュートなんか変わったよねー」

その日の放課後、チームメイト何人かと体育館に向かう途中、川崎が私にそんなことを言った。


「えっ?そう?」


自分では分からなかった変化を川崎に指摘され、ついつい嬉しさが顔から滲み出る。

「うん。安定してるっていうか…もしかして、隠れて特訓でもしてる?」

「うーん…」

洞察力のある川崎には、敵わないな。



私は、朝こっそり練習してから学校に来ていることを川崎にだけ話した。


もちろん、幡多くんのことは伏せておいたけれど。






「え!!そーだったの?
なーんだ。言ってくれれば練習付き合うのにー!」

川崎はそう言って私の肩をバシッと叩いた。

「イタタ…、川崎は家逆方向でしょ。電車だし」

「あ!確かにっ」


2人で笑いながら歩いていると、前方から大きなあくびをしながら歩いてくる幡多くんが見え、声をかけそうになって寸前で思いとどまった。



隣には川崎もいるし、バスケ部のチームメイトも少し前を歩いている。

学校でバスケの話は、彼にはタブーだった。

かといって他に話すことも…ないんだよなぁ。


「ちーさーか。聞いてるー?」

「えっ?!あぁ、ゴメン!なになに?」


幡多くんに気を取られて川崎が話しているのに全然耳に入ってこなかった。



私は目が合わないように極力地面を見ながら歩いた。




なにこれ。気まずい。

私、なんでこんなに気を使ってるんだろう。




「だからこの前アンタの手、砂っぽかったんだ?朝から何やってんのかと思ったよ」


「ああぁ、あはは、そ、そうかも」

私は苦笑いをしながら相槌を返した。


すれ違う直前、チラッと幡多くんに視線を向けると、目が合って、何がおかしいのか含み笑いをしているのもちゃんとこの目で見た。