翌朝。


幡多くんは終始私にスマホを向けていた。


「なに?盗撮?」

私がしかめ面でそう言うと、幡多くんは「アホか」と呆れながら言った。


「汐見さん、フォームがブレブレなんだよ」

「え?」

「まずは、毎回同じフォームで打てるようにしたら?」

「同じつもりなんだけど…」

「全然ちがう」

「うそ?自分じゃ分かんない」

「だから動画。俺が撮ってるから、何回かシュート打ってみて」

「わ、わかった」


幡多くんだけベンチに座ってくつろいでるのが、何か癪だけど。
言われた通り、何度かシュートを打った。

奇跡的に1球入っただけだけど。





「見せてっ」


そして私は幡多くんからスマホを奪うと、すぐに再生ボタンを押した。

「あっ」

「うわっ」

「ほんとだ」

「うそっ」

「本当に私?」

「ヘタすぎてやばいんだけど」

動画に映る自分を見て1人でツッコミを入れる。


幡多くんも横目で動画を見ながら、「ですね」と言った。

「えー…。なんかショックだ。やる気を削がれた」

「これが現実だよ」

「上手に、なるのかな?」

幡多くんの隣に腰掛けてそう言うと、幡多くんは動画をまた再生させた。

「俺に聞かれてもね。全部アナタ次第でしょ」

他人ごとのように言われたけれど、おっしゃる通りで。
幡多くんが頑張るわけじゃない。
私が自分で頑張るしかない。


「…うん。

ていうか!何回動画見てるの?恥ずかしいからやめてよ」


隣の幡多くんのスマホを覗くと、最後の方に唯一決まったシュートシーンが流れていて、「え!入った!」と飛んで喜ぶ私の姿が映し出された。

撮られていることを思い出してすぐに平然を装う姿は何とも滑稽だ。


隣を見ると幡多くんは顔を背けてくくっと笑いを堪えている。


「…むかぁ」

「よかったな。1本入って。ふっ」

「うるさいなぁ」



そんなこんなで、今日のこっそり練習は、自分のシュートフォームが一定ではないということが分かった貴重な1日となった。