「そうだとしたら、栞は私を軽蔑する?」
「っ!」
「妹に高校を中退させてまで看護学校に通い、妹の稼いだお金で生活しているんだから、無理もないけど」
「そ、そんなことは思っていないよ。ただ、秘密にされたのが……ショックだったの」

 まぁ、本当に姉が玉の輿を狙いに湊さんに近づいたのなら、それもまたショックだけど、軽蔑はしない。
 だって、生きるためだもの。それを正当化したくない、と言えるほど、私は子どもでもないし、いい子でもなかった。

「うん。確かにショックかもね。僕だったら、酷いと言ったかもしれない」

 突然、男性の声が遠くから聞こえてきて、私は横になっていた体を起こした。
 姉もその声の主が誰だか分かるせいなのか、手を貸してくれる。そこはさすが看護師と言うべきか、一切もたつくことはなかった。

 けれど男性に向き合った瞬間、女の顔に変化する。我が姉ながら器用だとしか言いようがない。声のトーンもどこか高くなり、嬉しそうに男性の名を呼ぶ。

(みなと)さん」