薄暗い寝室へ入ると、尚史さんは私をベッドの上に乗せた。一瞬、ドキッとしたのも束の間、すぐに明かりが点けられた。

「期待していたところ悪いが、足の様子を見たい」
「えっ、そ、そんなつもりは……」

 なかったと言えば嘘になる。「責任を取って」と言った手前もあって。

「これでも医者だからな。完治するまではするつもりはない」
「……どのくらい?」
「っ! あと二週間。だが、用心したいからプラス一週間は様子を見たいところかな」

 尚史さんはそう言いながら包帯を取った。さらに濡れタオルまで持ってきて、丁寧に私の右足を拭いて巻き直す。

「すまなかった。許されることじゃないが、ちゃんと責任は取るから」
「どのくらい?」

 すでに姉から私を守ってくれたり、こうして献身的に面倒を診てくれたりしている以上、十分、取ってもらっていた。それでも聞かずにいられなかったのは、私の我が儘だ。

「栞が許してくれるのなら、これからもずっと……取らせてほしい」
「うん。だけど一つだけ、条件があるの」

 素直に頷きたかったけれど、私もこれだけは譲れなかった。