「確かに私は被害者で、尚史さんは加害者かもしれない。でも、尚史さんのお陰で変われたような気がするの。だから……その、ちゃんと責任を取ってくださいね」

 どんな、とは言わずもがな。尚史さんは分かってくれた。
 さっきまで私に触れるのすら怖がっていたのに、抱きしめてくれたのだ。

「そういうわけだから、帰ってくれないか、一ノ瀬。これから栞と大事な話をするところなんだ。そのくらい分からない、とはさすがにねぇよな」
「っ!」

 姉の息を呑む声が聞こえたが、表情までは見ることができなかった。いや、尚史さんが見せたくなかったのだろう。
 頭の後ろに手を当てられ、私は尚史さんの胸に顔を押し付けられていた。

 しばらくして、玄関の扉の音が二度すると、ようやく解放された。と思った瞬間、横抱きにされて……。

「えっ、あ、尚史さん!?」

 リビングに行くのかと思っていたら、その途中にある扉を開けた。そう、寝室の扉を。