「自分たちの普段の行いが招いたことなのに、同じ被害者面をされる方がもっと嫌。尚史さんみたいに、分かりやすい態度を取ったら? こうして私の望みを叶える形で罪滅ぼしをしてくれているのに」

 そう、お姉ちゃんから離れたい、という私の望みを叶えてくれている。方法や手段、誘い方は荒っぽかったけど。そこもまた、尚史さんらしかった。

「お姉ちゃんたちは私に何をしてくれた? 入院代だって、結局は院長夫人が払ってくれたから、芳口先生だって何もしていない。私を轢いた犯人は……これから慰謝料を貰うからいいけど。お姉ちゃんは?」
「私は……」
「何もしてくれないのなら、放っておいて。それが一番だから」
「栞……俺は……」

 そんなつもりはなかったけど、結果的にはそうなった、と尚史さんの顔には書いてあった。思わずクスリと笑ってしまう。

 だって、この中で一番自分の気持ちに、正直に生きているような気がするから。素直に怒ったり、皮肉れたり。真っ直ぐに生きている。

 その反面、私は現状に甘んじて……変えることを恐れていた。
 自分に自信が持てず、何をやっても「妹だから」「中卒だから」「親がいないから」と、そのレッテル通りの気持ちと振る舞いをしていたような気がしたのだ。