そうして過ごしている内に、危惧していたことがやって来た。幸い、尚史さんがいた時だったからいいけれど、いなかったらどうなっていたことだろう。

 ピンポーン、とインターホンが鳴り、尚史さんがソファーから立ち上がる。

「栞はここにいろ。絶対にリビングから出るな」

 そう念入りに言う尚史さんは、まるで誰かが来ることを事前に知っている様子だった。

 苛立った声音に、すぐさま返事をすることができなかった。何か、良くないことが起こる前兆のような気がして。
 すると、私が反抗していると思ったのか、傍に置いていた松葉杖を取り上げるようにして、持っていってしまった。

「な、尚史さん!?」

 私が驚いている間に、バタンッと強く扉が閉められる。それだけで、物凄く拒絶していることが伝わってきた。が、これは完全に逆効果である。

 何故なら尚史さんがそこまでする相手は、あの二人しかいない。私はとうとう、その時がやって来たのだと悟った。