そんなに睨んだって無駄だよ、お姉ちゃん。

 今や園子夫人のお気に入りと化している私に向かって悪い噂を立てた、お姉ちゃんが悪いんだから。

 常に夫である芳口院長の影で、病院に携われなかった園子夫人。
 元々世話好きだったこともあり、私を助けてハイ終わり、と切り替えられる性格ではなかった。

 ちょくちょく見舞いに来る、と初めてお会いした時に言われたが、その宣言通り、園子夫人は週三日のペースでやって来たのだ。
 だから私たちの事情や姉の所業。湊さんとの逢瀬など、知ることができた、というわけである。また、看護師さんたちとも仲良くなれるキッカケにもなっていたらしい。

 しかし姉と結婚するのはあくまでも、湊さんである。だから姉は未だに湊さんの婚約者、という立場だった。
 園子夫人が姉に対して難色を示しても、私と親戚になれるのならば、多少、目をつぶっているとかいないとか。

 目の前にいる園子夫人を見ていると、本当にそんな気がしてならなかった。

「だってこれからはもう、栞さんとなかなか会えないのよ。少しくらい、いいじゃない」
「大丈夫ですよ、院長夫人。栞を連れて来る時には連絡をしますから」
「あら、さすが尚史くんね。よく分かっているわ。でも、そんなことをいうと遠慮なく甘えてしまうわよ」
「私も院長夫人とお話するのは好きなので、遠慮なさらないでください」

 何せ湊さんが払うと言っていた私の入院代を、園子夫人が肩代わりしてくれたのだ。湊さんと姉の迷惑料として。