「ただ偽装……岡先生の提案を聞き入れた私が言うのも何ですが、そこまでする必要があったのかなって思っただけです。私と違って血縁ではないんですから、距離を置いてやり過ごすことはできなかったんですか?」

 そもそも同じ病院にいるから、岡先生の評判が悪くなるのだ。さらにその原因ともいえる湊さんの肩代わりをさせられているため、他の医者よりも抱えている患者は多い。

 それなのに、恋人になったばかりだという理由で、律儀に私のところに来るものだから。いくら偽装でも、やり過ぎなのでは? と思ってしまう。

 岡先生が忙しいのは知っているし、ちゃんと休んでほしい。休憩時間に私のところに来るのではなく、岡先生が心から本当に休まる場所で。

 これからは姉と湊さんの外出のアリバイ作りで休憩時間が増えると言っていたけれど……どこかでしわ寄せが来るとも限らない。ううん、絶対に。
 けれど湊さんがフォローしてくれるわけでもないから、結局のところ、振り回されていることには変わりないのだ。

「……後悔しているのか?」

 寂しそうな声で言う岡先生。

 もしかして私が嫌がって言っていると思ったのかな。

「まさかっ! ただ、どうしてそうしないのか、疑問に思っただけです」

 医者になるために湊さんから借りた分は、すでに十分、返したように見えてならなかったからだ。