愛おしそうに私を見つめ、髪にキスを落とす。
 顔を背けたくても、コルセットがそれを許さない。だから代わりに、再び目を瞑った。

「こういう点は神に感謝しないとな」

 信仰心なんてなさそうな性格をしているのに、と思うものの、胸がドキドキして反論できなかった。
 岡先生もそれを承知なのか、さらに接近してくる気配を感じる。

 な、なに?

 前髪を掻き分けられている感触がした途端、額に何かが当たり、驚いて目を開けた。
 すると案の定、岡先生の顔が近くにあって……一瞬、偽装恋人だということを忘れそうになった。

 それを岡先生も察したのだろう。上げた口角を戻し、眼差しも真剣なものへと変える。
 茶髪の奥にある強い意志が宿る瞳に吸い込まれそうになり、目を閉じようとした時だった。

「ううん!!」

 大きな咳払いに、私はハッとなった。が、岡先生は逆に、ここぞとばかりに距離を詰めて、唇を重ねる。それも一瞬だったが、来訪者である姉には十分な効力を発揮していた。