「二人きりの時でないと信憑性も足りないだろう?」

 岡先生はそう言いながら、まるで覆いかぶさるような体勢で、私と向き合った。

「信憑性って誰にですか?」
「湊と一ノ瀬姉は勿論だが、二人のやっていることを表沙汰にするには、俺たちの関係を、全く関係のない外野に知らしめる必要がある」
「お姉ちゃんたち、いえ芳口先生は上手くそれを隠していたんでしたっけ」

 代わりに岡先生の悪評が広まり、湊さんの尻拭いや肩代わりをしているのに、何故か非難がそっちばかりに向けられていたらしい。
 それは偏に、普段から湊さんの評価が高いから、できた話だった。岡先生の自業自得とも捉えることができる。

 けれど、それすらも湊さんに操作されていたとしたら?
 私が姉に『手のかかる妹』『そそっかしい妹』というレッテルを、勝手に貼られていたのと同じで。

 ずっと傍にいなかったから忘れていたが、昨日の院長夫人の前で見せていた姉の姿で思い出した。
 あぁやって私を利用して、姉は自分を周りによく見せていたのだ。素の自分を上手く隠して。

「そうだ。隠蔽は湊の十八番(オハコ)だからな。まさか一ノ瀬姉も、同じムジナだと思わなかったが」
「類は友を呼ぶだけではなかったってことですよ」
「だが、いいものも呼んでくれた」
「……それが私、ですか?」
「あぁ」

 岡先生の手が伸びて来て、私の髪を一房、掴んだ。