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 翌日。
 岡先生の立ち会いのもと、私は警察に事情聴取を受けることになった。

 本当は担当医の湊さんがするべきなのだが、昨日、私と岡先生が恋人になったから、と身を引いたらしい。

 そんな取ってつけたような理由で仕事を擦りつけるなんて、岡先生も大変だな、と警察官越しに見ると、私を安心させるかのように微笑まれた。

「っ!」
「どうしましたか?」
「な、なんでもありません!」

 あ、あれは私が患者だから、入院している被害者だからで、他意はないはず!
 そ、そうよ、きっと。

 偽りでも、急に恋人関係になったものだから、私も慣れていないだけで……。

「あまり無理強いはさせないでください。昨日も色々と混乱していましたので」
「そうでしたか。また何か思い出しましたら、ご連絡ください」
「お疲れ様です」

 病室の入口まで警察を見送った岡先生が戻って来た。しかも、何故か深刻そうな顔で。

「一応、報告書では知っているつもりでいたが、まさかこれほど酷かったとはな」
「えっ、本気で心配してくれているんですか?」
「おい、これでも俺は医者だぞ」
「そう、でした」

 何だろう。寂しいような、嬉しいような。よく分からない感情で、胸がいっぱいになった。