すると、何故かここでも岡先生に笑われてしまった。そんなにおかしなことを言っただろうか。

「すまない。一ノ瀬の妹、というから、どんな奴なのかと思えば……姉に似て肝が据わっているな」
「やめてください。あんな姉と一緒にされたくはないです」
「二人だけの姉妹って聞いていたけど、仲が良くないのか?」
「アレとどうやって?」

 思わず敬語が取れてしまったけれど、岡先生は気にも留めていなかった。

「それもそうか。でも何で、素直に引き受けたんだ?」
「別に素直にってわけではないです。利害が一致した、というか。芳口先生との結婚が上手くいけば、姉がもう、私を利用することはないと思っただけで……」
「あの手のタイプがか?」

 私は首を横に振った。

「少なくとも、その頻度は減ると思うから」
「減ったとしても、次にやって来る問題は、その倍になっている可能性の方が高い」
「……まるで経験者のような言い方ですね」
「現に、湊がそうだからな。友達の振りをして、俺のことは使い勝手がいい駒か何かだと思っているんだろう。今回の件がまさにそうだ。だけど今は俺にもメリットがあるからいい。でも結婚したらどうなるか。さらに無理難題を押し付けられる可能性があると思っている」
「だったら、引き受けなければいいのに……」

 岡先生と湊さんは別に、血縁関係でもなんでもないんだから。