「二十六だよ」
「四つ上!?」
「意外か?」
「もっと上かと思って……」
「おい。軽く失礼だぞ。これからはしばらく傍にいる存在に対して」

 一瞬、えっと思ったが、姉と湊さんのアリバイ作りに協力する、ということは、そういうことを意味していた。
 しかも、二人が戻って来るまで一緒に。それは恐らく、一時間や二時間ではないだろう。

 岡先生は私の後ろに回り、車椅子を押した。

「まぁ意識を取り戻してから数時間で、すべてを理解するのは難しい、か」
「ば、バカにしないでください。このくらい大丈夫です。ただ驚く出来事が多くて……」

 脳が処理できないだけ、と言いかけて止めた。これでは岡先生に言われたことと同じだからだ。

 すると、後ろからクククッと笑い声が聞こえてきた。思わず振り返り、抗議の視線を送る。

「別に湊の尻拭いを率先してやっているわけじゃないさ」
「美味しい思いでも?」
「まさかっ!」
「でも、シュークリームがって、さっき……」

 今度は大笑いされた。さすがに私もこれはないかな、とは思ったものの、それ以外、思い浮かばなかったのだ。