「確かに、こんなことに巻き込んで悪いとは思っているわ。でもね――……」
「いいよ、今更。弁解されても決定事項なんでしょう。えっと、岡先生も巻き込んでいるんだからさ。それで、どんな手はずになっているの?」


 さっき師長は、人手が足りていない、と言っていた。それなのに、一人の患者に医者、それも外科医が二人に看護師が一人付いていたら、怪しまれる。
 いつまでもこんな所にいたら、尚更だった。

「湊さんは栞の担当医、ということになっているけれど、実際は担当医としての役目を果たせる時間があまりないの。色々と他にもやることがあるから。それでいつも岡先生はその……駆り出されている、というわけ」

 さっき岡先生が『こういう時は大抵、駆り出されているんだ』とか『お前らの尻拭い』とか言っていた内容が、ようやく私の中で繋がった。

 確かに、次期院長と目されている人が、一般の医者と同じなわけないもんね。色々とやることが多そうだ。

「だから、湊の担当患者イコール俺の患者も同然なんだよ」
「つまり、私の傍に岡先生がいても、誰にも怪しまれないってことなんですね」

 よくできたシステムだ、と言わざるを得なかった。

「そういうわけだから、すまない、岡。すぐに頼まれてくれないか」
「……早速とは節操がないな。でもいいぜ。シュークリーム二つで手を打とう」
「助かる。それじゃ行こうか、琴美」
「はい」

 意気揚々と、この場から離れていく二人に向かって、私は手を振った。行くならさっさと行け、とばかりに。