「あぁあ、何だか興が冷めたな」
「すみません」

 それでも岡先生は、私が笑い終わるまで待ってくれていた。

「いや、いきなり事故に遭って、放置されて。挙句の果て、助けてくれたのが病院を経営している院長夫妻ときた。しかもこれからの入院生活で、アリバイ作りに加担されるんじゃ、おかしくなるのも無理はないと思うぜ」
「……別に、頭を打っておかしくなったわけではありません」

 私を取り巻く環境が特殊だっただけだ。

「協力者が先生で、しかもこんな……」
「ガラが悪ってか?」
「っ!」
「いいって。それにまともだったら、こんな提案にわざわざ乗ったりしねぇよ」

 それは私も含めて、姉と湊さんもまともではないことを示唆していた。

「岡。頼むからこれ以上、僕の評判を下げないでくれ」
「大丈夫だ。こんな提案をした時点で、すでに下がっている。そうだろう?」
「……まぁ、類は友を呼ぶ、と言いますから」
「栞っ!」
「お姉ちゃんだって、自分がいい子だとは思っていないでしょう?」

 どっちがこの提案を(けしか)けたのか知らないけれど、同意すれば共犯も同然だった。