けれど相手は姉の事情も知っている。そう言っておけば、勝手に納得するだろう。案の定、湊さんは一切疑うことなく、柔らかい笑みを向けてくれた。

「そうだったんですか。確かに、看護師は夜勤がありますからね。時間が合わないのは仕方がないです」
「栞が毎日、頑張っているのを見ているので、休日はゆっくりと過ごしてほしくて、私もなかなか声をかけられなかったんですぅ」

 これは間違っていない。何故なら私と姉は、とても微妙な関係で成り立っていたからだ。

 けして仲のいい姉妹ではない。けれど、共にやっていかなければ、自分らしく生きることができないのを知っているからだ。

 両親を亡くして親戚の家に行けば、自分の自由など皆無。面倒な人間関係が待ち受けている。それをしないための共同戦線だった。

 しかしそれをずっと、とは私も姉も考えてはいない。だからこそ、私を利用してでも湊さんという優良物件を逃すまい、と必死なのだ。

 そして最終目的が同じ、ということもあり、私はその小芝居に乗らざるを得なかった。姉と離れるためならば、これくらいどうってことはないのだ。