逃げた先も薄暗い路地で、すっかり日が暮れていたこともあり、よく近付かないと周りの人の顔もよく見えない状況。

辺りが暗くなるにつれてこの暗い雰囲気とは真逆のカラフルなネオンの看板が私を迎える。

どうやって家に帰ろうかと途方に暮れていると、すぐ後ろで、耳をつんざくような勢いのいい排気音が鳴った。

「ひいっ!」

怖くなり思わず振り向くと、そこには見覚えのある顔があった。

「嘘でしょ、、、」

最初は周りの薄暗さと相まって似ているように感じるだけかと思った。だけどネオンの看板にその顔が照らされたことで疑念は確信へと変わった。

「い、一ノ瀬きゅん、、、?」

紛れもない私の想い人が、イカついバイクに乗ってタバコを吹かしていた。

耳には重そうなピアスがちゃらちゃらと吊り下がっており、学校では第1ボタンまできっちり閉めているその制服を、だらんと着崩していた。

私には気付いていない様子で、隣にいる明らかに不良そうな人達と楽しげに話していた。

「いやーマジでさ、アイツほんとムカつくんだよ。1回シメてやらね?」

「最近調子乗りすぎだよなー」

「痛い目みねーとわかんねぇよ」

何やら物騒な会話をしている友人たちの横で、彼が声を上げて笑う。

そこには爽やかさの欠片もなくて、私はただただ信じたくないという気持ちのまま、目を逸らすことが出来なかった。