「一ノ瀬や ああ一ノ瀬や 一ノ瀬や
春都と呼べば バチが当たるか」

私の想いはこれで伝わっただろうか。
不安になりながら一ノ瀬きゅんをみると彼は爽やかな笑顔でありがとうと言ってくれた。

、、、私の告白にOKしてくれたってこと?
さっそく手繋いだり熱いkissをしたりしていいってこと?

そんなことを考えていると一之瀬きゅんの手が私の髪へと近づいてきた。

もしかしてKiss?! こんな公衆の面前で、、、?でもそんな積極的な一ノ瀬きゅんも好き!

すると一之瀬きゅんは私の髪から何かを取ってすぐに手を遠ざけた。

「髪にヘラクレスオオカブトついてたよ」

ペットかな?と私にカブトムシを差し出す一ノ瀬きゅん。

勝手な妄想をしていた私は途端に恥ずかしくなった。

「あ、そ、そうなの!ペットで、、、名前は、えっと、3年寝太郎!」

なんとか上手く誤魔化せたが、髪に虫をつけてる女なんてドン引きだよね、、と泣きそうになる。

「へえ、可愛い名前だね。菅原さんの頭は居心地がいいのかな」

それなのに、一ノ瀬きゅんは呆れることもなく、こんなどうしようもない私に優しく話しかけてくれた。

なんて素敵な人なの、、?

よく『人にはウラがある』って言われるけどきっと天使みたいな一之瀬きゅんにウラはないよね、、、

うっとりと彼の顔を見つめ、このまま時が止まればいいのにと心の底から願った。

しかし、、、

「2人の世界に入りすぎわん!挨拶運動しないとだわん!!」

と急な邪魔が入り、私の幸せなひと時は終わりを告げた。

犬塚先輩の顔が整っていなかったら、私はエルボーで彼の鼻を折っていただろう。

「あ、ごめん。仕事しないとだから戻るね。また放課後に」

そう言って申し訳なさそうに私から離れていく一ノ瀬きゅんの背中をずっと見つめていた。