「お節介だと思うんだけど。そのまま帰ったら風邪引くと思って。私は折りたたみ傘あるから」
渋々その人は、私の傘を受け取った。
「ありがとう」
少しだけ、嬉しそうな顔をした。

「あの時の人って天宮君だったの?」
「思い出してくれた?」
話をされるまですっかり忘れていた。
「クラス替えがあって、斉藤さんと同じクラスになれたとき、あの時のお礼が言いたかったんだけど、なかなか言い出せなくて、ごめん」
「ううん。どういたしまして。私の方こそ今まで忘れててごめんね」
そしてお互いおかしくなって笑った。
「あっ見て」
私は外を指差した。
雨はすっかり上がり、空には虹が出ていた。
「天宮君、ここでバイトしてることは学校の人たちには絶対言わない。その代わりに…またここに来てもいい?」
天宮君の声がパッと明るくなった。