どんどん声が小さくなっていた。
「お願い。このことは学校には黙っててくれないかな?」
「でも…」
私は学校で生徒会長を勤めているので、生徒の校則違反を見逃すわけにはいかない。
しかし、私の見る限り、天宮君は成績優秀で遅刻なども今までしたことがない。
そんな真面目な彼が、校則を破ってまで、バイトをしているという事は何か事情があるはずだ。
「何か事情があるの?」
私が尋ねてると、天宮君はゆっくりと話し始めた。
「実は、俺の家は代々医者になるのがあまり前の家で、親にも医学部までエスカレーター式で行ける高校を受験するように言われて、受験したんだけど。結局落ちちゃって。
親にも家追い出されたんだ。
で、滑り止めで受けた今通ってる学校に、いとこの家に居候して通わせてもらってるんだ」
私は言葉を失った。
いくら親が進めた高校に受からなかったからって家から実の子供を追い出してしまうなんて。
「雨宮君はそれでよかったの?」