だからこの顔……と、互いを指差す瞳子とイチに、セキが溜息をつく。

「付喪神───“神逐らいの剣”が気に入るってのは、どういう意味だ、イチ」
「そのままの意味です。この見目だけ麗しい“花嫁”サマを、()の御方も気に入り我が物にしたいと、そう申されたのではないですかね?」
「……そうなのか、瞳子」

向けられたセキの眼差しがあまりにも真剣で、おかしな物をくれたと責めるつもりでいた瞳子は、急にいたたまれない心地になった。

(何よ。私にスキがあったって、言いたいわけ?)

赤い“神獣”の“花嫁”でありながら付喪神と浮気でもしたのかと、()うつもりだろうか。

(これだから男ってヤツは)

女を自分の『所有物』としてしか見ていないのだろう。だから───。

「何か、されなかったか?」
「は? 私に貞操観念がないとでも」
「怖い思いや不快な思いをしたのなら、すまない。俺の配慮が足らなかった」

膳を脇に避け、セキが瞳子に頭を下げた。その、少しクセのある赤茶髪のつむじを見下ろし、瞳子はあぜんとする。

(えっ……なんで? 私、責められてるわけじゃなかったの?)