「……いきなり、なんです?
セキ様の“花嫁”に、仮とはいえなられた方が不調法にもほどがありますよ。
まさか、そのお年で私に礼儀作法を指南しろと、おっしゃるつもりですか?」

「まぁ、飯を食いながらでもできる話なら、俺は別に構わない。場を改めるなら、朝餉の後にしないか?」

開口一番の瞳子の言葉にあっけにとられていたものの、主従それぞれの反応が返される。
瞳子はまず、黒髪の従者ににっこりと笑ってみせた。

「おはよう、イチ。朝からよく舌が回るわね〜、うらやましいわ。
───じゃ、食べながら本題に入らせてもらうわ、セキ」

赤茶髪の主人格をにらみつけ、手にした物を傍らに置いてみせる。
白木の(さや)に覆われた、細身の刀。瞳子が、セキの“花嫁”になる条件と引き換えに、預かったもの。

「コレ、何? なんかヤバいもんでも()いてたりするの?」
「やばい……?」
「ああ、付喪神(つくもがみ)ですね」

瞳子の物言いをおうむ返しするセキの横で、こともなげにイチが言い、失笑をもらした。

「まさか、気に入られましたか? 貴女、容貌(かお)だけは良いですからね」
「いや、あんたにだけは言われたくないわソレ」
「───待て。なんの話だ?」