「暴れ馬には調教が必要だよね……!」
「放してっ」

ぬめった手汗の感触に、瞳子は乱暴に足を振る。勢い、バランスをくずした───!

「う、そっ……!」

空中におどりでた身体は、重力に従い、落ちる。
が、瞳子の先ほどの浅はかな計算とは違い、近づくのは屋根より離れたアスファルト。

瞳子にできたのは、ぎゅっと目をつむり、この先に待つ痛みが、少しでも軽く済むことを祈るだけ。

(どうか、神様ッ……!)