「……分かったわ。お休み、セキ」
「ああ。お休み、瞳子」

素っ気なく告げ、床に転がったネズミを拾い上げる瞳子に対し、虎太郎───セキは屈託のない笑顔を向ける。

(っ……、もうッ、なんなのよ、コイツ)

その笑顔に自分のなかの罪悪感が頂点に達してしまい、瞳子は先ほど言いかけたことを思わず口走った。

「アンタの名前! 頑張って、帰るまでには伝えられるようにするからっ……!」
「え……いや、それは」
「私ばっかり自分の願い事を叶えてもらうのって、フェアじゃないし!
だからっ……短い間だけど、よろしく!」

思いきり頭を下げ、瞳子はセキの返事を待たずに、宛てがわれた部屋へ足早に向かった。

───自らの頬が、酒でも湯あたりでもなく、セキとのやり取りに気恥ずかしさを感じ、熱くなったのを自覚しながら。