「己の“花嫁”を得るために」

まっすぐな言葉が自分を指していることに気づき、瞳子はいたたまれない心地になった。

罪悪感と、ほんの少しの面映(おもはゆ)さを抱え、思わず虎太郎から顔を背ける。

ふっ……と、笑う気配がした。

「まぁ、“神獣”側の本音はそうなるんだが、建前上は『この国の民に恵みをもたらし、幸を与えるため』となるな」

茶化した物言いが自分に対する気づかいなのだと分かると、瞳子のなかの罪悪感がいっそう募った。

「じゃあ……なんで、あんたはその……“化身”? した姿のままなの? 獣の姿には、戻りたくないってコト?」

期待に応えられないという意味は、そういうことなのかと瞳子は考えたのだが、虎太郎はゆるく(かぶり)を振った。

「いや。───戻りたくないのではなく、戻れないんだ、俺は」
「えっ?」
「瞳子に“神獣”としての姿を見せられない。すまない」

ふたたび、虎太郎が()びながら瞳子に頭を下げてみせる。

「いやいやいや……、それ、大丈夫なの?」
「瞳子のことは、責任をもって俺が護る。心配しなくても、お前を護るくらいの力はあるから、大丈夫だ」
「いや、そういうことじゃなくて」