「つ、月島さん……?」

動揺はしているものの、いつまたこの男が開き直って瞳子に襲いかかって来ないとも限らない。

おまけに───。

(いまの音に警備の人が駆けつけてくれるかと思ったのに……!)

廊下からも、人がやって来る気配がない。
築年数を何十年も経たショッピングセンターのセキュリティなど、たかが知れているということか。

瞳子は、なけなしの知識で馬鹿げた計算をする───ここは二階で、下には駐輪場の屋根がある。

(骨折……くらいで済むかな……?)

屋根といっても、プラスチック素材。どれだけのクッション性が期待できるか。

「……誰も、来ないね?」

瞳子の迷いをさとってか、須崎の顔にふたたび気持ち悪い笑みが浮かんだ。

「ここがイヤなら家においでよ。ちょうど今、女房と子供、実家に戻ってるからさあ」

その言葉に、瞳子のなかの諸々の感情が弾ける。

「ふざけんな、このっ、エロオヤジ! 誰があんたなんか、相手にするもんかっ」

足元にあった段ボールを蹴り飛ばすと、なかは空だったらしく、須崎の顔にボスンとぶつかった。

けほけほと(ほこり)にむせた後、カッとなったように須崎の手が伸び瞳子の足首をつかむ。