「ええと……正直、こういう着物の形ではなくて、もっと動きやすい服だと助かります」
「では───」

と、ひざまずいた状態の桔梗が、懐から折りたたまれた和紙を取り出した。数枚のそれを、瞳子に手渡してくる。

「その中に、瞳子さまのご要望に近い意匠はありますでしょうか?」

受け取って目を通す瞳子を見上げ、桔梗が告げる。

「そちらは、お隣の“下総(しもうさ)ノ国(のくに)”の“花嫁”さまがお召しになられているお着物でございます。

瞳子さまと同じように、異界から“召喚(しょうかん)”された姫さま方が望まれた意匠と伺っております」
「私と、同じように……?」

描かれた着物の型はそれぞれで、墨一色で記されていた。

一枚目は、引き違いの合わせに胸の下で帯が締められ、片側の大腿(だいたい)半ばから切れ目の入った、いわゆる中華風の衣。

二枚目は、筒袖(つつそで)の短い(すそ)の上衣に、ひざ丈の筒袴(つつばかま)という、幼い子供が着るような甚平式の衣。

最後は、おそらく水干(すいかん)を元にしているのだろうが、下衣が裾のふくらんだ袴ではなく、すっきりと細い、くるぶし辺りの長さの筒袴だ。

(私と同じように、この世界にやって来た人達がいる……)