もったいつけた言い方にムッとしていると、答えを要しない口調でイチが続けた。

「貴女がセキ様に真名を伝えられなければ、セキ様ご自身は永久にご自分の名を知ることはない、ということになるのですよ」

思わず、虎太郎を振り返る。
気まずそうに視線をそらし、虎太郎は立ち上がった。

「ちょっと! 何その責任重大な感じ!
だいたい、声にださないで伝えるって、どういうことよ? さっきの───」

と、先ほど見た虎太郎の真の名だという漢字二文字を口にしようとした。が。

「───。───?
……って! なんで言えないのよーッ!!」

瞳子の絶叫が、虚しく辺りに響いた。