具体的な日数に、それが実現可能であることを瞳子に期待させる。

(私が……コイツを信用するか、しないか)

本音を言えば、男を───人を信用するのは恐い。

だからこそ、瞳子が“陽ノ元”に来て初めて信用した相手はネズミだったのだ。

「どうする?」

選択を迫られ、瞳子の胸がひときわ高く拍動をうつ。

(コイツを完全には信用できない)

けれども。
交わした会話と瞳子に向けられた善意の態度は、多少なりとも信じられる気がした。

(それに、美形ってワケでもないし)

虎太郎の容姿は、美丈夫とは言い難い。人好きのする、親しみやすい顔立ちだ。

(どちらかっていうと、コッチの男のほうが美形)

イチと呼ばれる従者は、黙っていればかなりの美青年だろう。
口うるさいのが災いして、そうとは気づきにくかったが。

(顔の良い男は信用できない)

幼い頃に刻まれた、瞳子のなかの男に対する判断基準。
瞳子は刀を受け取ろうと、右手を差し出した。

「あんたを、選ぶわ」

───いまは。
白狼という白い“神獣”が放つ追っ手から逃れるため。
いずれ、元の世界に帰るため。