《七》

瞳子の言葉に、虎太郎はまばたきを数回 返してみせた。

「……“神逐(かむや)らいの(つるぎ)”をか?」
「そうよ」

それは、小さな味方───ハツカネズミからの助言であった。

おそらく、大変貴重な物であるソレを、瞳子に差し出すかどうか。
虎太郎の真意や度量を見極められるのではないか、と。

そして、瞳子にとっては自分の身を守るための、いわば【保険】でもあった。

男からも、また、先程のような化け物から襲われた時にも、反撃するための手段になるからだ。

(もう何もできないまま、みじめな思いなんてしたくない)

刀など、扱ったことはもちろんない。刃物は包丁がせいぜいだ。

だが、可能か不可能かではなく、やらなければヤられるのはこちらなのだ。

幸いなことに、そういう開き直りのようなことが瞳子は得意だった。
ためらいは、ない。

「あー、うん。そうだな……悪いが、二つ目の条件は、無理だ」
(でしょうね)

予想通りの答えだ。
瞳子は、用意していた次なる要求を口にしようとする。

しかしその前に、虎太郎があっけらかんと笑った。

「瞳子に“神逐らいの剣”をやることはできないが、預けることは、できる。それでは駄目か?」