「いいですか? 貴女も……その首の“証”がある限り、否応無しに白い“神獣”様の“花嫁”なのですよ?
こんなところで油を売ってないで、貴女のお屋敷にお戻りください。
我が“主”が為した事、確かに出過ぎた真似。後ほど(しか)るべき報告と謝罪を白い“神獣”様にいたします」

早口でまくし立てると、深々と瞳子に頭を下げた。
言われた本人は、不服そうにその姿を見ている。

(おーおー、都合の良い時だけオレを“主”扱いすんのかよ)

苦笑いをしながら、虎太郎は急に黙り込んでしまった瞳子に目をやった。

イチを冷めた眼差しで見下ろしたのち、ふいに何か思いだしたように、きょろきょろし始めた。

「……どうかしたのか?」
「あんたには関係な───……いけど、一緒に探してくれると助かるわ」

渋々といった面持ちで言い直す様が、なんだか可愛らしい。
虎太郎は、うなずいた。

「何を探せばいい?」
「ハツカネズミ」
「…………コレですか」

ひょい、と。
死んだフリでもしているかのような、茶褐色の小さなネズミをイチがつまみ上げて見せる。

「死んでる!?」
「いや、生きてますって。騒ぎに驚いただけでしょう」