(なんなの、胡散(うさん)臭い)

おい、と。
もう一度、赤茶髪の男が呼びかける声を放ったのと同じくして、その側に、黒髪を束ねた男がいるのにも気づく。

こちらは先の男に比べると小柄で、水干(すいかん)と思わしき青い衣を身にまとっている。

(……胡散臭い男が増えた)

思いきり眉を寄せる瞳子にはお構いなしに、最初の男がつらつらと口上を述べると、消えていた入道が現れたのち───また、消えた。

刀を振るった赤茶髪の男が、瞳子に歩み寄ってくる。

近くで見上げた男の顔は、瞳子よりも幾分若く見えた。

「来ないで!」

もう、懲り懲りだった。

訳の分からない状況と、次々に現われる怪しげな存在───男たち。
力で押し切られれば、無力で敵わぬ、女のこの身。

「なんなのよ、あんた達!」

吐き捨てた言葉は、自分自身への憤りも多分に含んでいた。

(私は……こんなにも無力だったの……?)

「どうやら、自分を害するモノとそうでないモノの区別もつかないらしい。助け損ですよ、セキ様」
「助けてなんて、頼んでないわよ!」