百合子にまで気を遣ってもらうほどに、自分の落胆が顔に出ていたのかと思うと、苦笑いするしかない。

深々と頭を下げ、闘十郎たちを見送ったのち、セキは気を取り直してイチに声をかける。

「お前、(じん)がどこにいるか、知ってるか?」
「は? あの風来坊ですか?
私より妙子(たえこ)に訊いたほうが早いのでは?」
「いや、この前会った時、妙子も知らないと言っていた」
「……面倒な猫ですね。分かりました。私のほうで探しておきますよ」
「頼む。オレのほうでも心当たりを探すつもりだが」

闘十郎の助言───瞳子が戻って来る前に、セキの“眷属”を増やしておくべきだと言われたのだ。
セキ自身も気になっていたことを指摘されては、即日動かなければ意味がない。

「いえ、貴方には別に、やっていただかなければならないことがありますよ」
「は?」
「“眷属”探しなんかよりも重要で、しかも貴方にとっては役得しかないことが」
「……お前……今度は、一体なにを企んでいるんだ……?」

イチの笑顔に、セキは頭を抱えずにはいられなかった……。