「……続きは、瞳子がこちらに戻って来た時に、だな」

言って、先ほどと同じくらい瞳子との間を置いて座り直す。
瞳子を見やると、(あか)く染まった頬のまま、にらむような上目遣いで見返された。

「アンタって……なんでそう余裕っていうか、大人な対応なのよ? 実は私よりすごい歳上だったりする?」
「へ? ……ああ、歳は二十七だが」
「年下じゃん!」
「そうなのか? 瞳子に言われるほど大人な対応はしてないと思うが」

不満そうにムッとしている瞳子の顔が可愛いらしい。
そんな彼女に、思わず噴き出してしまう。

「……まぁ、表面上なんとか取り繕えているのなら安心だな。俺の胸のうちを知ったら、瞳子は逃げだすと思うぞ」
「……そんないやらしいこと考えているの?」
「考えてないと思うか?」

とまどったような恥ずかしそうな、少し期待を(うかが)わせる表情が、小憎らしくも可愛い。
セキは、意趣返しのつもりで、からかうように笑ってみせた。

が。

「……少しは、考えて欲しいわよ。なんか、私ばっかりアンタのこと好きみたいじゃない」

などという、予想もしない言葉が返ってきた。

(いや、どこをどうしたらそんな……)

思いかけて、ふと、イチの忠告を振り返る。これか。セキが彼に解っていないと評される理由は。